【制度の使いこなし方】社会保険料は10月のお給料から変わるわけじゃない?

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お給料から引かれる社会保険料は、原則は10月のお給料から変更されます。7月に4月、5月、6月のお給料を平均した金額で標準報酬月額(社会保険料の計算の元になる金額)を計算しなおし、1年に一度だけ変更されます。以前のコラムに書いています。

ですが、原則があれば例外があります。例外とは、標準報酬月額が2等級以上変動したときです。標準報酬月額が2等級以上変動といってもわかりづらいですよね。お給料が3万円以上変動したら、というイメージです。標準報酬月額は約2~3万円ごとに1等級ずつ変わっていきます。2等級以上ということは、6万円以上お給料が変わったら、ということですね。標準報酬月額は表になっています。

平成29年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表

例外も以前のコラムに書いています。

「容子先生、お給料明細のことで質問があるのですが」

「はい、どうぞ」

「お給料明細の社会保険料の欄がマイナスになっているんです」

「あ、本当ですね」

「社会保険料の欄って、控除欄ですよね?お給料から引かれるものが書いてあるところですよね?」

「そうですね」

「控除欄がマイナスになっているって、源泉所得税しか見たことがないんですけど」

「年末調整のときですね」

「そうです、毎年12月は源泉所得税がマイナスです。それは毎年なんです。でも、今回の7月分のお給料では社会保険料の欄がマイナスになってるんです。何かの間違いでしょうか?」

「いえいえ、間違いではないと思いますよ。払いすぎていた社会保険料が戻ってきたんでしょう」

「えっ?だって、社会保険料が変わるのは10月じゃないんですか?」

「そうでないときもあるんですよ、特に今年は、ね」

「どういうことですか、教えてください!容子先生」

「それはですね」

新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言により、4月から5月にかけて会社がお休みになったところも多いでしょう。本人は仕事ができるのに、会社がお休みなので仕事ができないときには、会社が休業手当をお給料の代わりに本人に払う必要があります。休業手当についてはこちらのコラムをどうぞ。

「そうです、4月と5月は休業手当をもらったんです。いつもより少なかったけど、仕事してなくてお金がもらえました」

「6月からはいつも通りお仕事されて、お給料をもらいましたよね?」

「そうですね」

「今年に限ってですが、3月までのお給料と4月以降に払われた休業手当に差があれば、5月分の社会保険料から休業手当に合わせて社会保険料を変えることができるんです」

「ええ?どういうことですか?」

説明しますね。

  • 3月までの標準報酬月額 220,000円(15等級)
  • 4月に払われた休業手当で計算した標準報酬月額 104,000円(3等級)

※等級は厚生年金保険の等級です。

今までの標準報酬月額と今月払われたお給料で計算した標準報酬月額の等級が変わり、その変動が3ヶ月続いたら、4ヶ月目から社会保険料を変える、という随時改定という方法があります。今回は随時改定の特別バージョン、特例改定という方法を使えます。

標準報酬月額の特例改定

特例改定は2020年5月~8月までの社会保険料が対象で、特例改定を使うためには要件を満たさなければなりません。要件は3つです。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響により会社をお休みしたことにより、2020年4月~7月までにお給料が下がった月が1ヶ月以上ある
  • お給料が下がった月のお給料で計算した標準報酬月額が、前の標準報酬月額に比べて、2等級以上下がった
  • 社会保険料が下がることについて書面により同意した

「容子先生、私は3つともクリアしてたんですね?」

「そうですね。4月は休業手当が払われていて、以前より2等級以上下がってますね。これで2つはクリアです。3つ目の書面による同意ですが、社会保険料が戻ってくることについて会社から説明はありませんでした?」

「ありました!傷病手当金や年金が少なくなる可能性があるって。でもまあ、4ヶ月だけですし、いいかなって」

「・・・それで書類にサインしたんですね」

「えっ、まずかったですか?」

「いえいえ、まずくはありませんよ。説明に納得したのならね」

「納得というか・・・なんとなく」

「ま、まあ、それで5月分から標準報酬月が下がって、その分に合わせて社会保険料が下がったので、さかのぼって返金されたということですね」

「あー、なるほど!ん?でも容子先生、今はお給料は元に戻ってますよ?」

「そうですね、ですから、社会保険料はこうなると予想されますね」

  • 4月給料 休業手当 社会保険料は前のまま
  • 5月給料 休業手当 社会保険料は前のまま
  • 6月給料 お給料  低い社会保険料
  • 7月給料 お給料  低い社会保険料
  • 8月給料 お給料  低い社会保険料
  • 9月給料 お給料  低い社会保険料
  • 10月給料 お給料  6月、7月、8月の平均で計算した標準報酬月額による社会保険料

「容子先生、お給料が元に戻っても、社会保険料はすぐには変わらないんですね」

「そうですね」

「でも、結局10月にはまた社会保険料は変わるんですね」

「6月からお給料が変わってますからね、これがもし7月とか8月にお給料に切り替わったのなら社会保険料が変わる時期は11月か12月になりますね」

「はあ・・・なんかむずかしい」

「社会保険料が変わるときには会社から連絡があると思います。そのときにまた説明しますよ」

「はい、よろしくお願いいたします!」

今日のポイント

  • 新型コロナウイルス感染症で休業した場合には社会保険料は10月を待たずに変わることもある
  • お給料から引かれる金額は低いが、傷病手当金や年金に影響する

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