前回のコラムで、社会保険料の年度始めは10月とお伝えしました。社会保険料は残業代がついてお給料が変わっても1年間はそのままの金額です。基本的には、ね。
「容子先生、今日は何ですか?応用編?」
「そう、社会保険料の応用編、です。ちょっとお勉強の時間です」
「はい、あの、最後にテストはあるんですか?」
「ん?テストがあるのか気になりますか?」
「聞くときに気合いがちがいます。テストがあると気合いを入れて聞きますから!」
「へ、へえ・・・テスト、しましょうか?」
「えっ、容子先生、いやです!」
「いやなんですか・・・じゃあ、今回はテストはしません」
「今回は?!」
「気が向いたらテストするかも」
「えー?!」
「ま、それはともかく、社会保険料の応用編です。社会保険料が変わるのは10月だと前回お伝えしましたよね?」
「はい」
「そこから1年間は社会保険料の金額は、基本的には変わらないんです」
「基本的には変わらない?」
「そう、基本的には」
「基本的には、ということは、例外もありますか?」
「おっ、いい質問ですね!もちろん例外があります」
「どういうときですか?」
「それはこういうときです」
標準報酬月額が2等級以上変動したとき
「はあ?えーっと、容子先生、どういうことでしょうか?」
「説明していきますね、例えば、
- 12月のお給料 基本給20万円+通勤手当1万円=21万円
- 1月のお給料 基本給23万円+通勤手当2万円=25万円
となったとします。 上がった原因は、基本給の昇給と、引っ越しによる通勤手当の増加。 こういうときです」
「昇給はうちは4月ですけど、1月のところもあるって聞きます」
「そうそう、そんな会社をイメージしてみましょう」
「それで、どんな風に変わるんですか?」
「こう変わります」
- 12月のお給料 21万円→標準報酬月額 22万円(15等級)
- 1月のお給料 25万円→標準報酬月額 26万円(17等級)
標準報酬月額とは、社会保険料の計算の元になる表です。
(日本年金機構HPより)
標準報酬月額表で見ると、等級が2等級上がっています。等級が2等級以上上下すると、社会保険料の金額を計算し直します。
「社会保険料の金額は、だいたい20~25%です。20%とすると、
- 今までの社会保険料の金額 44,000円
- お給料が上がったことにより計算し直した金額 52,000円
となりますね」
「へえ~、じゃあ、1月のお給料から52,000円に変更になるんですか?」
「いいえ、1月からは変更にならないんですよ」
「えっ?お給料が1月から上がるのに?」
「そうなんです、これは3ヶ月間、上がったままかどうかを確認して、4ヶ月目から変わります」
「上がったままかどうかを確認して?」
「そうなんです!この場合は、1月のお給料だけ上がって、2月のお給料で下がったら10月の年度始めに決定したままの金額が来年の9月のお給料まで続きます」
「でも容子先生、この場合はたぶん2月のお給料は1月のお給料と変わらないですよね?」
「そうですね、昇給と引っ越しですから、2月に職場の近くにまた引っ越ししない限り変わりませんね」
「ですよね、だったらいつのお給料から変わるんですか?」
「それは、5月のお給料からですね」
「ん?」
「こうですね。1月でお給料変更、お給料はずっと上がったままとします。
社会保険料の金額は、
- 1月のお給料 44,000円
- 2月のお給料 44,000円
- 3月のお給料 44,000円
- 4月のお給料 44,000円(4月分の社会保険料から金額変更)
- 5月のお給料 52,000円
ですね。
社会保険料は、変更した月分の翌月のお給料から引かれますから、5月のお給料から社会保険料の金額が変わるというわけです」
「なるほど、勉強になりました!」
ここで注意!この社会保険料の金額の変更は、残業代がついてお給料が増えた、というときには関係ありません。毎月変わるものではなく、基本給や通勤手当など、毎月変わらないものが変更したときに関係します。
他にも色々と要件がありますので、お給料が大幅に上がった、もしくは下がった(4万円くらいが目安でしょう)のときには、上がったもしくは下がった後、5ヶ月目の社会保険料に注目してみましょう。
今日のポイント
- お給料が大幅に上がった、下がったときにも社会保険料は変わります。
- 残業代でお給料が増えたときには、毎月の社会保険料には影響ありません。