制度の使いこなし方のコラムは今回が100回目です。2019年6月にウェブサイトをリニューアルしてからちょうど2年、時々お休みしながらも月曜日の8時更新を続けてきました。
制度は、ずっと同じではありません。毎年といっていいほどどこか変わっています。変わった制度が、あなたにとってトクになることなのか、それともソンになることなのかは私にはわかりません。ただ、制度を知らないことでソンをすることはありますが、知っていることでソンをすることはありません。ソンをしそうだな、と思ったら、ソンをしない制度はないか、と探すことができます。制度を知っている、それだけであなたはトクをしているのです。
今回の制度の使いこなし方に登場する制度は労災保険です。労災保険とは、仕事中や通勤中に、仕事や通勤が原因でケガや病気になって治療を受けたり、仕事を休んでお給料が出ないときなどに備えてくれる保険です。正式名称は、労働者災害補償保険といいます。会社に雇われて働く人の災害を補償してくれる保険です。
保険は、お金を出しあうグループがあり、そのグループ内で事故が起こって害を受けた人のために、出し合ったお金で助け合う制度です。つまり、保険とは、保険料というお金を払っていないと助けてはくれない制度なのです。ですが、この労災保険はちょっとちがいます。保険料というお金を払うのは会社、助けてもらうのは社員なのです。ケガや病気になって治療を受けるというのは健康保険によく似ていますが、原因が仕事中や通勤中であれば、労災保険を使います。健康保険は使いません。
今回のタイトルにもある、会社で新型コロナウイルスのクラスターが起こり、新型コロナウイルスにかかったとしたら?
入院したり治療を受ける時に使うのは健康保険でしょうか?労災保険でしょうか?
会社で新型コロナウイルスのクラスターが起こり、新型コロナウイルスにかかった場合には、労災の対象になる可能性があります。入院したり治療を受けるときには労災保険を使います。
ただし、労災というのは、労災と認定されたら、という条件つきです。労災保険を使うときには、会社を経由して請求書を出し、労働基準監督署が労災と認めれば初めて労災保険を使えるのです。健康保険証を出せば治療を受けられるのとはちがいますよね。会社で起こった新型コロナウイルスのクラスターが原因で新型コロナウイルスにかかったということが労災として認定されれば、労災を利用して治療を受けることができます。ちなみに健康保険は3割負担ですが、労災保険は0割負担、負担なしです。最近は、治療を早めに受けさせるために、新型コロナウイルス関連の労災については早めに認定されることが多くなっているようですよ。
とはいえ、確実に労災である、と認められるには思ったより時間がかかるかもしれません。最終的には負担は0割でも、しばらくは治療費を払うことになることを考えて、入院などに備えるために生活防衛費の備えをしておくと安心ですね。
今日のポイント
- 会社での新型コロナウイルスのクラスターによる治療などは労災の対象になる可能性がある
- 治療費はしばらくの間は手元にある現金で対応するので生活防衛費の備えを