新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言発出。仕事によってはテレワークや休業せざるを得なくなり、収入が少なくなる人もいます。今後も緊急事態宣言が発出される可能性があることを考えて、収入が少なくなることに備え、ダブルワークを考える人もいるでしょう。そんなあなたに、ダブルワークの注意点をお伝えいたします。その1はこちら、今回はその2です。
「容子先生、ダブルワークをするときの注意点は、
- 勤める会社の就業規則でダブルワークができるかどうか
- 税金の確定申告
と、他は何でしょうか?」
「はい、それは労災、です。労災は知っていますか?」
「確か、会社でケガしたりしたときに使えるものですよね?」
「そうですね。労災は労働者災害補償保険と言って、会社などに雇われた働いている人、つまり労働者が、会社の仕事や通勤が原因でケガや病気になったときに補償される保険です」
「えっ、保険だったんですか?でも保険料は払っていないと思うんですが」
「これは、会社が保険料を全部払ってくれています。働いている人は払う必要はないんですよ」
「そうなんですね。どうりで給与明細にはないと思いました。それで、労災で気をつけることって何ですか?」
「例えば2つの会社で働いているとしますね」
「はい」
「どちらかの会社でケガをしたら、他の会社でも働けなくなる可能性がありませんか?」
「ありえますね」
「お給料はノーワークノーペイの原則、つまり働かなければお給料はない、ということですね。となると収入はどうなりますか?」
「あっ!なくなっちゃう・・・全部?でも、そんなときには労災から払ってもらえるんじゃないですか?」
「確かに払ってもらえますが、全部ではありません」
「全部じゃない?それは困ります。どのくらいですか?」
労働者災害補償保険の休業(補償)給付は、会社での仕事や通勤が原因でケガや病気にかかって仕事ができず、お給料がないときに労災からもらえるお金です。
ただし全部ではなく、給付基礎日額(平均賃金)の80%です。給付基礎日額は、ケガや病気にかかった日を基準にして、前3ヶ月にもらったお給料の総額をカレンダーの日付で割った金額です。
例えば、1月18日にケガをして、ケガをした会社のお給料がこのような場合の計算です。
- 12月 20万円(31日) 11月20万円(30日) 10月20万円(31日)
- 給付基礎日額 (20万円+20万円+20万円)÷(31日+30日+31日)=6,522円
- 休んだ日が20日だったら、6,522円×80%×20日=104,352円
休業して4日目から支払われます。
「え・・・かなり少ないですね。半分くらい?」
「休んだ日数にもよりますが、思ったより少ないですか?」
「それに、もしダブルワークをしていたらダブルワーク先の会社のお給料分はないわけですよね?困る・・・」
「そう、今まではそうでした」
「今までは?」
「2020年の9月からは、ダブルワーク先のお給料もプラスして計算されるようになったんです」
「えっ、そうなんですか?」
例えば、先ほどの例で、ケガをした会社とは別の会社のお給料が10万円の場合を考えてみましょう。
- 給付基礎日額(20万円+10万円+20万円+10万円+20万円+10万円)÷(31日+30日+31日)=9,783円
- 休んだ日が20日だったら、9,783円×80%×20日=156,528円
5万円ほどちがいますね。
「おっ、でも半分くらいには変わりないか・・」
「それでも、ダブルワークをしていて毎月のお給料が30万円だったら、10万円に下がるよりも15万円になるのならお金はまだ安心ですよね」
「そうですね」
「ですので、ケガをした会社以外の会社には休むことを伝えるときに、労災でケガをしたことを伝えて、書類を書いてもらわないといけません」
療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第5号)
(厚生労働省ホームぺージより)
「労災病院で治療を受けるときの書類です」
「そうなんですか?」
「そうでないと、ケガをした会社以外の会社のお給料がわかりませんからね」
「そうですね」
「これが3つ目の注意点ですね」
「そうそう、容子先生、もしダブルワークを、会社に勤めるのではなく自分で事業をしたら?の注意点は?」
「それは次にしましょう」
「よろしくお願いします!」
今日のポイント
- 2つの会社に勤めるときには、労災で休む場合は必ず片方の会社にも連絡して書類を書いてもらう
- 労災からのお金は、お給料の約半分