新年明けましておめでとうございます。制度の使いこなし方、2021年第1回目のコラムです。2020年には新型コロナウイルス感染症の拡大により緊急事態宣言が発出、会社がお休みになった人も多いのではないでしょうか?また緊急事態宣言が出ると収入が少なくなる、そんな不安から、ダブルワークの相談をしてこられました。
「容子先生、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」
「こんにちは、明けましておめでとうございます。こちらこそ今年もよろしくお願いいたします」
「早速ご相談なんですが」
「はい、どうぞ」
「ダブルワークをしようと思っているんです」
「ダブルワークですか」
「はい、収入が急にとだえたときに対応できるように、今の会社とはちがう職種なんですが、別の会社でも働こうと思っているんです。何か気を付けることはありますか?」
「そうですね、3つあります」
「3つ?はい」
「1つ目は、今の会社と、ダブルワークの先の会社が両方とも、就業規則で副業を認めているかどうかです」
「就業規則ですか?」
「はい、就業規則は知っていますか?」
「なんとなく。会社で働くときのルールが書いてあるものですよね?」
「そうですね。それに副業を認めるかどうか書いてあれば問題ありません。副業はOKだけれども、会社の許可がいる、と書いてある場合もありますから」
「ダブルワークをするのに会社の許可がいるんですか?」
「会社の仕事にもよりますが、会社にとって大切なことが他の会社に漏れてはこまる仕事をされているのであればできない場合もありますよね。例えば研究とか開発とか」
「事務ならそんなこともありませんよね?」
「いえいえ、個人情報を取り扱っているのなら、それを他の会社で使われると困りますからね」
「そうなんですね」
「両方の会社で確認しましょうね」
「はい、わかりました」
就業規則とは、会社で働くときのルールです。副業については、会社で会社自身のルールを決めます。
- ・副業をしてはいけない
- ・副業は会社の許可を得て行う
- ・副業は大歓迎
などなど、色んな書き方があると思います。現在仕事をしている会社と副業をする会社、どちらの会社でも副業が認められていないと、両方の会社で働くことはルール違反になります。
「2つめは、税金です」
「税金ですか?」
「副業先の会社では、年末調整はされませんので、今の会社と副業先の会社の収入を合わせて確定申告をしましょう」
「確定申告しないといけないんですか?」
「確定申告しなければいけない、というわけではありません。ただ、年末調整がされないと、税金がどのようになっているかわかります?」
「どのようになっている、ですか?いえ、わかりません。容子先生、教えてください」
「年末調整とは、毎月のお給料や賞与から引かれている所得税を正しい金額に調整する手続です。この手続は会社がしてくれます。毎月のお給料や賞与から引かれている所得税は仮の金額なので、あなたが1年間に払うべき所得税とはちがうんですね。1年間に払うべき所得税の金額をきちんと計算してお給料や賞与で調整するんです」
「お給料から引かれているのは仮の金額なんですね」
「そうです。しかも、副業先の会社のお給料や賞与から引かれる所得税の金額は、本業のお給料や賞与から引かれる金額よりも多いんですよ」
「えっ、そうなんですか」
「本業は扶養人数などを考慮した甲欄(こうらん)の金額ですが、副業先では乙欄(おつらん)を使います。例えばこうですね」
例:20万円のお給料で扶養する人がいない場合
- 甲欄4,770円
- 乙欄20,900円
「うわっ、全然ちがう!」
「そして調整する手続きをされないということは?」
「あっ、多い金額を払ったまま!」
「そうですね、ですから確定申告をすることによって、払いすぎた税金を自分で調整することができます」
「なるほど、確定申告をする方がいいですね」
- 本業の会社では扶養控除等の申告書を提出し、甲欄で所得税は計算されます。
- 副業先の会社では、扶養控除等の申告書を提出せず、乙欄で所得税は計算されます。
手続の方法も変わりますので、注意しましょうね。
「3つ目については、次にしましょう」
「はい、それと容子先生、今考えているのが、ダブルワークをするのに、別の会社に勤めるのではなくて自分で事業をしようと思っているんです。別の会社に勤めるときの注意点以外に何かありますか?」
「もちろんありますよ。それも一緒に次回で」
「はい!」
今日のポイント
- ダブルワークの注意点は2つ
- 就業規則で副業が認められているかどうか確認しましょう
- 所得税は確定申告して取り戻りましょう!