労災保険。会社で働いている人が自動的に入っている保険で、仕事中や仕事の行き帰りにケガをしたり、仕事が原因で病気になったりしたときに補償されるものです。健康保険の仕事中バージョンと思っていただければいいですね。ケガの治療だけでなく仕事を休んでお給料がないとき、障害が残ったとき、亡くなってしまったときの遺族への補償も含まれています。
「容子先生、今日は労災について質問があるのですが」
「あら、ケガでもしましたか?」
「いえ、そういうわけじゃなくて、例えば、例えばですよ、ダブルワークをしている場合に一つの会社でケガをして会社を休んだとするじゃないですか」
「ダブルワークね、はい」
「そのときには、二つの会社からもらっているお給料を元にしてお金がもらえるんですか?」
「ああ、残念ながら、今はムリですね」
「えっ?ムリなんですか?」
「労災が起こった会社のお給料だけを元にして計算されるんですよ」
「ええ?でもケガして働けなくなったら、両方の会社で働けなくなりますよね?収入が減るから、困りますよね?」
「そうですね、でも、今は労災が起こった会社のお給料だけを元にして計算されているんですよ」
「えー?えっ?今はっておっしゃいました?」
「今年から計算が変わります」
「えっ?そうなんですか?」
2020年3月31日に労災保険法が改正されて、9月1日から変わる予定です。
- ダブルワークをしている人が仕事上でケガをしたり病気になったとき
- 両方の会社での仕事が原因でケガをしたり病気になったと認められたとき
この状況で労災と認められたときは、複数業務要因災害となります。これは新しい労災の型です。労災保険から受け取れる給付(お金)は、両方の会社でのお給料を元にして計算されます。
「両方の会社での仕事が原因であることが必要なんですね」
「そうですね、ですからどちらかといえばケガよりも病気の方がイメージできますね」
「そっか、働く時間が長くなって疲れたから病気になったとか、ですね?」
「そうです。ダブルワークをしている人にとってはもらえるお金が大きくなる可能性があるのでいい話かもしれませんね」
「そうですね」
「ところで」
「はい?」
「ダブルワークをしているとか、する予定があるんですか?」
「えっ?い、いいえ・・・えーと、ちょっと検討中で・・・」
「そうですか。ダブルワークするときには今の会社のルールとか色々確認することもありますから、決める前に一度ご相談くださいね」
「はい、容子先生、わかりました!」
今日のポイント
- 2020年9月からダブルワークしている人が仕事上でケガをしたり病気になったときの労災保険の計算方法が変わる
- 労災は申請して、認定されてからお金を受け取れるので申請は忘れずに