労災保険、正式名称を労働者災害補償保険とは、会社員のための保険です。会社に雇われて働いている人が、労災(労働災害)
- 仕事上で仕事が原因でケガをしたり病気になったとき
- 通勤途中に通勤が原因でケガをしたり病気になったとき
に補償されます。補償は、治療、休業、障害、介護、死亡の補償などです。健康保険と厚生年金の保障の仕事バージョンですね。
厚生労働省ホームページより
保険とは、集めたお金でお金を出した人に何かあったときに保障や補償される制度ですが、労災保険は、補償を受けられる人がお金を出す保険ではありません。保険料は、補償を受けられる人、つまり会社員を雇っている会社が支払います。保険料は、4月~翌年3月の1年間に会社が払ったお給料や賞与の合計×保険料率です。保険料率は、その人がしている仕事によってちがいます。労災が起きやすい仕事であれば高いですし、労災が起きにくい仕事であれば低く設定されています。
厚生労働省ホームページより
労災に該当するケガや病気の場合は、健康保険では治療を受けられません。病院の窓口で労災であることを告げましょう。健康保険では治療費は3割ですが、労災保険では0割です。ただし、ケガや病気が労災として認定される必要があります。労働基準監督署に認定をしてくれるよう請求しましょう。仕事上なのか、通勤上なのか、また治療を受ける病院が労災指定病院なのか労災指定病院以外なのか、によって書類がちがいます。
では、会社員以外の人、会社の役員や自営業の人は労災の対象ではないのでしょうか?
原則は、対象外です。ただし、対象になるときがあります。特別加入といい、特別加入するときは、保険料は自分で払います。特別加入には、4種類あります。
- 中小事業主・・・中小企業の社長などで社員と同じく現場で働く人
- 一人親方・・・建築業や個人タクシーなどで個人で仕事をしている人
- 特定作業従事者・・・農家などで働いている人
- 海外派遣・・・日本の会社に雇われているけれども海外で働いている人
厚生労働省ホームページより
個人で仕事をしていて、どの仕事にも該当しない場合は労災の対象にはなりません。万一仕事上でケガや病気になった場合も健康保険を使うことになります。また、休業しても補償はありませんので、自分で所得補償保険に加入したりなどの対策をしておいた方が安心でしょう。
ですが、今まで労災の対象ではなかった仕事が労災の対象となりました!今年の4月以降、特別加入の範囲が広がったのです。まず、2021年4月からは、
- 芸能従事者(俳優・舞台監督など)
- アニメーター
- 柔道整復師
が追加されました。
厚生労働省ホームページより
2021年9月からは、
- 自転車貨物輸送者(Uber Eatsの配達員など)
- ITフリーランス
が追加されました。
厚生労働省ホームページより
特別加入で労災保険に入る場合は、
- 労働保険事務組合を通じて加入する
- 補償額(給付基礎日額)を決め。保険料を自分で払う
- 労働保険事務組合の会費を自分で払う
ことが必要です。会社員のように、保険料を会社が払ってくれるわけではなく、労働保険事務組合への会費も払うことになります。特別加入と言われるゆえんですね。労災が認定されることが必要なこと、労働基準監督署に請求することは同じです。
仕事でのケガや病気に備えるための選択肢が広がりました。
労災は、会社員だけのものではないので、働き方によって加入できるかもしれません。
今日のポイント
- 労災は会社員の特権です。会社員でない場合は特別加入する必要があります。
- 労災の特別加入の範囲が広がりました。