年金制度には、多くの会社員が加入している“厚生年金”と、自営業や求職中の人が加入している“国民年金”があります。
厚生年金は、納付率100%、加入していればすべての人が払うことになります。一方、国民年金は、“免除・猶予制度”というものがあり、収入が低いなど、条件があえば一時的に払わなくてよくなっています。だから、こんな記事が毎年、新聞に掲載されます。
国民年金保険料の納付率68%
これは、2019年6月27日の日本経済新聞夕刊の記事の見出しです。これだけ見ると、68%の人が国民年金を払っていて、32%の人は免除・猶予制度を使って払っていないのかな?と思いますよね。
ですが、実はそうではないのです。この68%というのは、免除・猶予された人を除いた人達、つまり、“国民年金を全額払わなければならない人の68%がきちんと国民年金を全額払っている”ということなのです。
免除・猶予された人たちは、国民年金を全額支払わなければならない人から除かれますので、国民年金に加入している人たち全員で見ると、納付率はこうなります。
国民年金保険料の納付率40.7%
この40.7%という数字は、記事内には掲載されていても、見出しには掲載されていません。新聞を隅から隅まで読む人は少ないですから、見出しを見ただけでは、納付率68%ということしかわかりませんよね。
68%と40.7%では印象が大きく変わります。国民年金を払っている人についてまとめてみるとこうなります。
- 全額、一部免除された人で払っている人 約4割
- 免除・猶予されているため払っていない人 約4割
- 全く払っていない人 約1割
全額払っている人→一部免除された人で払っている人→免除・猶予されているため払っていない人、の順番で将来受け取る年金はどんどん少なくなり、全く払っていない人は、払っていない分の年金はゼロとなります。全く払っていない人は自分の年金が払っていない分のゼロになることは知っていますが、免除・猶予されている4割の人は、自分の年金が少なくなる意識を持っていないことが意外と多いことにおどろきます。
免除・猶予制度というのは、“今一時的に払わなくてよい”というだけで、払わないままだと将来の年金は確実に少なくなります。そういうことも含めて、年金制度をなるべくわかりやすく、自分ごととしてとらえてもらえるように伝えていこう、と毎年この見出しを見るたびに思います。