被保険者と被扶養者、どちらが優先されますか?
ん?なんのこと?と思ったあなた、言いかえますね。
被保険者と被扶養者、選べると思いますか?
もうちょっと丁寧に言いかえますね。
社会保険の被保険者と被扶養者、どちらになるか選べると思いますか?
「容子先生、質問があります!」
「はい、どうぞ」
「社会保険は、働いている人が全員入っているんですか?」
「社会保険?」
「えーと、健康保険と厚生年金です」
「健康保険と厚生年金は働いている人が全員入っているか、という質問ですか?」
「はい」
「答えはNOです」
「えっ?そうなんですか?」
「正確に言うと、健康保険は働いている人も働いていない人も全員入っています。厚生年金は、会社でいえば正社員が入っていますね」
「ん?どういうことですか?」
健康保険は、日本に住んでいる人は全員入っています。ただし、色んな種類があるのでどの健康保険に入っているかは、働いているか働いていないか、年齢や収入によって変わります。
「一言で健康保険といっても、会社員が入る全国健康保険協会の健康保険、健康保険組合の健康保険だったり、国民健康保険だったり、後期高齢者医療保険だったり色々種類がありますね」
「私が入っている健康保険は、どの保険でしょう?」
「保険証を見ればわかりますよ。下に書いてありますね・全国健康保険協会ですね」
厚生年金は、会社で働いている正社員は基本全員加入します。働いている人でも働く時間が少ない場合は厚生年金には加入しませんが、20歳から60歳の人は国民年金に加入します。
「ですから働いている人が全員社会保険に入っていますか?という質問への答えはNOです」
「そうなんですね、実はですね、容子先生」
「はい?」
「義姉がパートで働いていて、いま兄の扶養に入っているんですけど、会社の人に、この働き方だと再来年からは社会保険に入ってもらうから、と言われたそうなんです。同じ働き方なのにどうして社会保険に入ることになるんですか?」
「ああ、それは、再来年から社会保険の被保険者の範囲が拡大されるからなんですよ」
「えっ、容子先生、どういうことですか?」
社会保険の被保険者になるのは、その会社の正社員の4分の3以上の日数、4分の3以上の時間で働いている人、です。
社会保険の被保険者にならない人で、
- ・社会保険の被保険者と同居
- ・年収が130万円未満
- ・扶養する人の年収の半分未満
の人は、社会保険の被保険者の被扶養者になれます。被扶養者になれない人は、自分で国民健康保険、国民年金に入ります。
「聞いたことあります。ですから、義姉は、30時間未満で働いていて、年収も130万円より少なくしてるって言ってました」
「今はほとんどそれで被扶養者にはなれるんですね。でも、実は社会保険の被保険者になる要件がもう一つあるんです。人数が多い会社で働いている場合です」
厚生年金の被保険者が501人以上の会社で働いている人の場合
- ・週20時間以上
- ・月収8.8万円(年収106万円)
- ・1年以上の契約
- ・学生ではない
の人は、社会保険の被保険者になります。
「501人以上の会社が、2022年10月に101人以上の会社に変わるんです。お義姉様の会社は、501人未満だけど101人以上なんじゃないですか?」
「あっ、そうなのかな・・・それで再来年から社会保険に入ることになるんですね」
「そうです、お義姉様は、今は年収130万円未満、お兄様の年収の半分未満ならよかったんですが、そうはいかなくなるんですね」
「でも容子先生、社会保険に入らない、という選択肢はないんですか?」
「社会保険に入る要件は満たしているのに入らないこともできるか、ですか?」
「そうです」
「それはできません」
「できないんですか?」
「はい。被保険者になったら、被扶養者からはずれます。もし被扶養者のままでいたかったら、時間を短くしたり、収入を少なくしたりする必要がありますね」
「そうなんですね」
「お義姉様に伝えておいてください」
「わかりました。でもまだ2年あるから、急ぐことはないですよね」
「いえいえ、1年契約だと1月や4月に契約の更新をすることがありますから、あと1年くらいしか余裕はありませんよ」
「あっ!」
「扶養に入っていた方がいいのか、社会保険に入って働く方を選ぶのか、今から考えたほういいでしょうね、あっ、ちなみに、1年以上の契約も2ヶ月以上働いていたら、に変わりますからそれも伝えておいてください」
「はい、伝えておきます!」
今日のポイント
- 再来年から社会保険の加入要件が変わる
- 被保険者になると被扶養者にはなれない